こんにちは、ヨガインストラクター/書店員の葉です。 今回は、かなりルール違反ですが、まだ読んでいる途中の作品を紹介してしまいます!とはいえ短編集なので、その中の読み終わった物語についてです。 紹介する作品は短編『息吹』、それが収められた書籍のタイトルも『息吹』で、SF/ファンタジー作家テッド・チャンの作品です。以前も書きましたが、私は映画も好きで、この作家についても映画を通して知りました。 『メッセージ』という、ものすごく雑な説明をしてしまうと『未知との遭遇』のようなSF作品がありますが、その原作となったネビュラ賞、ヒューゴー賞受賞作『あなたの人生の物語』を書いた人です。映画と原作は重要なポイントが違っているのですが、それぞれに素敵な作品だと思います。映画『メッセージ』は、宇宙船やヘプタボッドと呼ばれる生物の造形、その生物たちが使う未知の言語とその文字など、音と映像によって映画ならではの表現が興味深く、私はとても好きな作品の一つです。   そして『息吹』ですが、物語の最後に辿り着く、絶望、諦め、自分がここに存在するという奇跡への感謝、会ったことのない他者への希望、そういったものが完璧に入り混じったメッセージと、そこから受けるインパクトにしばらく呆然としてしまいました。今もその時の感覚が自分の中に残ったままです。なんだか、すごく大げさな書き方をしていますが…この短い文章作品の中に、これだけのものが詰めこまれていて、物語、ストーリーを描くことの意味がこれでもかと伝わる感じでした。さらに大げさになってます… 特にネタバレがどうという物語でもない、と私は思うので書いてしまいますが(少しでも嫌!という人はここで終了してください)、 地球と少し似ている、でも人間とは全く違う仕組みで動いている生命体の生活と、その世界が避けようもない最後を迎えるというものです。この中で起きていることは、今私たち人間が地球に住んでいる状況とかなり似ていて、このままではここに住める環境ではなくなることが解ってはいるものの、即効性のある解決法が見つからないまま、どんどん時間が過ぎていきます。 避けようのない滅亡に対して主人公は素晴らしい解釈をし、他の存在たちに向かってポジティブとも言えるメッセージを残すのですが、果たして人間もこのように美しく、ある種、潔い結論に至れるものなのだろうか?と考え込んでしまいました。 この物語の生命体の身体は金属で構成されていて、地球の生命体のような有機的、オーガニックな存在ではないので、終末もシンプルな「静止」として迎えられるようです。ですが、有機的な仕組みの中で生きる、有機的な生命である私たちが環境の危機を迎える場合、住環境の悪化や飢えなど、もっと生々しい状況を通ることが想像できるからです。 他の作品もとてもスマートに書かれていて、気持ちの悪い、落ち着かない結末は今のところありませんが、それでも読み終えるとぐるぐると考えてしまう作品が多く、そういうのが好きな方にはおすすめです。私は好きです。 *** 写真はSFっぽく?ディバイスの中の小説を撮ってみました。 この中に本が何冊も入っているなんて、子供の頃、家のテレビが白黒だった人間から見るとすごいことです、ほんと。

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